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硫化系固体電解質の性質及び全固体電池AS-LiB®の特性について




目次
  1. 01一般的な全固体リチウムイオン電池の内部構成
  2. 02固体電解質を使用するメリット
  3. 03固体電解質の種類
  4. 04硫化物系全固体電解質のメリットとデメリット
  5. 05一般的な全固体リチウムイオン電池の特性について
  6. 06全固体電池AS-LiB®の特性について
  7. 07全固体電池AS-LiB®独自の製造方法





一般的な全固体リチウムイオン電池の内部構成



全固体電池は負極層、固体電解質層、正極層の三層から構成されており、全ての材料に固体物質を使用した電池です。

固体電解質はリチウムイオンのみを移動させ、正極と負極との接触を防ぐセパレータの役割も備えています。

充電方向に負荷をかけると、正極が持つリチウムイオンが固体電解質層を経由して負極へと拡散し、放電時にはリチウムイオンが逆方向へ移動します。

下の図は、一般的なリチウムイオン電池と当社全固体リチウムイオン電池それぞれの内部構成イメージです。


リチウムイオン電池 内部構成
内部構成






固体電解質を使用するメリット



安全性



固体電解質を使用することで、液漏れのリスクがなくなります。

また、固体電解質は難燃性であるため、発熱によって可燃性ガスが発生する心配もありません。
これらにより、バッテリーの安全性や信頼性が大幅に向上します。


広い動作温度範囲



固体電解質は低温でも凍らないため、従来のリチウムイオン電池と異なり極寒環境でも充放電が可能です。

また、高温環境でも固体電解質は分解しないため、通常の液体電解質系リチウムイオン電池が動作しづらい高温環境でも、安定した充放電が可能です。



長寿命



従来のリチウムイオン電池ではリチウムイオンと対となる陰イオンも同時に動くため副反応が生じてしまうことがありましたが、固体電解質はリチウムイオンだけを効率的に移動させる特性を持っているため、副反応がほとんど発生せず、電池の劣化を抑えることができます。

これにより、長期間にわたって安定した性能を維持できる長寿命で信頼性の高いバッテリーが実現します。





固体電解質の種類


固体電解質としての材料は、硫化物系と酸化物系の2種類があります。



メリット
デメリット
硫化物系
・低い粒界抵抗
・高いイオン伝導度
・相対的に軟らかい
・大気中での扱いが困難(水分と反応)
酸化物系
・空気中で高い安定性
・高い耐久性
・高い粒界抵抗
・相対的に低いイオン伝導度
・相対的に硬い


AS-LiB®はイオン伝導度が高い硫化物系を採用しています。
酸化物系と比べて高容量の電池を実現できるため、引き続き高容量化に向けて開発に取組んでいます





硫化物系全固体電解質のメリットとデメリット



当社が採用する硫化物系固体電解質のメリットとデメリットについて詳しく解説します。



硫化物系固体電解質のメリット



低い粒界抵抗

硫化物系固体電解質の最大の利点の一つは、相対的に粒界抵抗が低いことです。

粒界抵抗とは、材料間の境界で生じる抵抗のことを指し、これが低いと、リチウムイオンが電解質内をスムーズに移動できるため、電池全体の性能向上に寄与します。

この特性により、より高効率なエネルギー伝達が可能となります。


高いイオン伝導度

硫化物系固体電解質は、他の固体電解質材料と比較して高いリチウムイオン伝導度を持っています。

これにより、電池の充放電速度が速くなり、高入出力を実現することができます。

特に、電気自動車や高性能バッテリーにおいて、迅速なエネルギー供給が求められる場合に、この高いイオン伝導度は大きな利点となります。


相対的に軟らかい 

硫化物系固体電解質は、相対的に柔らかい性質を持っており、これが電極との密着性を高める要因となります。

この密着性の向上により、電極と電解質の界面抵抗が低減され、より効率的なエネルギー変換が可能となります。

また、柔軟な素材であるため、バッテリーの製造過程においても加工しやすいというメリットがあります。



硫化物系固体電解質のデメリット



大気中での扱いが困難

硫化物系固体電解質の主なデメリットは、大気中での取り扱いが非常に難しいことです。

特に、水分と反応して有毒な硫化水素ガスを発生するリスクがあるため、製造や取り扱いの際には厳密な環境管理が必要です。

このため、硫化物系固体電解質を使用する際には、専用の製造設備や取り扱い手順が求められます。






一般的な全固体リチウムイオン電池の特性について


硫化物系固体電解質を用いる一般的な全固体リチウムイオン電池の特性をご紹介します。


高電圧材料を適用できる可能性



従来のリチウムイオン電池では、電解液の酸化側の化学的安定性が低い(電位窓が狭い)ため、高電圧材料を使用すると電解液が分解する懸念がありましたが、全固体リチウムイオン電池では、固体電解質の酸化側化学的安定性が高いため、安定的に高電圧材料を適用できる可能性があります。
また、高容量材料として硫黄系正極があります。従来のリチウムイオン電池で硫黄系正極を使用すると、電解液に溶出するといった本質的な課題がありますが、全固体リチウムイオン電池ではそのような本質的な課題が無いため、高容量材料を適用できる可能性もあります。

そのため、高容量化や高電圧化が可能となり、電池のエネルギー密度の向上にも期待がかかります。

寿命、劣化



電解液を用いた従来のリチウムイオン電池等では、リチウムイオンの移動と同時に、陰イオンも移動するなど反応が複雑です。

陰イオンが電極に堆積して全体的な反応を阻害するなど、正反応以外に副反応が多数生じるため、劣化要因が多数存在します。

一方で、全固体リチウムイオン電池では、固体電解質の中で陽イオンとなるリチウムイオンのみが移動するため、相対的に反応がシンプルとなります。

結果的に副反応や劣化要因が少なくなるため、一般的に長寿命の電池であるといわれています。

また、充電状態で電極と電解液の副反応により被膜を形成する従来のリチウムイオン電池と異なり、そのような副反応を生じにくい全固体リチウムイオン電池は、充電状態での保管劣化が少ないと言われています。

入力、出力、充電時間



電解液を用いた従来のリチウムイオン電池では、リチウムイオンは溶媒をまとって(溶媒和) 移動するため、本質的に移動抵抗を持ち、黒鉛負極などの層状化合物へのインターカレーションを阻害すると言われています。

一方で、固体電解質を用いた全固体リチウムイオン電池では、骨格が固定された固体電解質の中で、リチウムイオンが自由に移動できるため、本質的にはとても速くリチウムイオンが移動することができると言われています。

このため、全固体リチウムイオン電池全般として、入力密度や出力密度の向上、つまり急速充電や急速放電を期待する声もあります。

ただし、本質的には急速充放電が可能であると言えるものの、全固体リチウムイオン電池ではすべての反応が固体-固体界面(点接触)で生じることから、従来のリチウムイオン電池のような液体-固体界面(面接触)に近い理想的な反応界面を設計しなければ、急速充放電のポテンシャルは引き出せないことになります。






全固体電池AS-LiB®の特性について


硫化物系固体電解質を材料として使用する当社全固体電池AS-LiB®の特性をご紹介します。


高電圧材料を適用できる可能性



難燃性の無機固体電解質を使用した全固体リチウムイオン電池は、化学的安定性や安全性が高いため、従来のリチウムイオン電池では電解液の分解や材料の電解液への溶出等の課題、または安全上の問題で使用できなかった高容量材料、高電圧材料を適用できる可能性があります。

そのため、高容量化や高電圧化が可能となり、電池のエネルギー密度の向上にも期待がかかります。

寿命、劣化
電解液を用いた従来のリチウムイオン電池等では、リチウムイオンの移動と同時に、陰イオンも移動するなど反応が複雑です。

陰イオンが電極に堆積して全体的な反応を阻害するなど、正反応以外に副反応が多数生じるため、劣化要因が多数存在します。

一方で、全固体リチウムイオン電池では、固体電解質の中で陽イオンとなるリチウムイオンのみが移動するため、相対的に反応がシンプルとなります。

結果的に副反応や劣化要因が少なるなるため、一般的に長寿命の電池であるといわれています。


入力、出力、充電時間



電解液を用いた従来のリチウムイオン電池では、リチウムイオンは溶媒和して溶媒とともに移動するため、本質的に移動抵抗を持ち、黒鉛負極などの層状化合物へのインターカレーションを阻害すると言われています。

一方で、固体電解質を用いた全固体リチウムイオン電池では、骨格が固定された固体電解質の中で、リチウムイオンが自由(フリー)に移動できるため、本質的にはとても速くリチウムイオンが移動することができると言われています。

このため、全固体リチウムイオン電池全般として、入力密度や出力密度の向上、つまり急速充電(充電時間を短くする)や急速放電を期待する声もあります。

ただし、本質的には急速充放電が可能であると言えるものの、全固体リチウムイオン電池ではすべての反応が固体-固体界面(点接触)で生じることから、従来のリチウムイオン電池のような液体-固体界面(面接触)に近い理想的な反応界面を設計しなければ、急速充放電のポテンシャルは引き出せないことになります。





全固体電池AS-LiB®の特性について


硫化物系固体電解質を用いている当社全固体電池AS-LiB®の特性をご紹介します。

140mAhの特性


140mAhの特性

140mAhの高温・真空下での充放電サイクル特性

120℃、1.0×10-2 Paという高温・真空環境下の繰り返し充放電特性(サイクル特性)です。

充電および放電レートは1Cで行っており、50サイクル毎に充電及び放電ともに0.3Cで容量確認試験を実施しております。
グラフは0.3C充放電時のデータとなります。通常の電池は1回も充電や放電ができない非常に厳しい環境となりますが、AS-LiB140mAhは500回繰り返し充放電を行っても初回容量の約80%の容量維持率を示します。


140mAhの常温・常圧下での充放電サイクル特性

25℃、常圧という通常環境下での繰り返し充放電特性(サイクル特性)です。

充電および放電レートは0.3Cで行っており、50サイクル毎に充電及び放電ともに0.1Cで容量確認試験を実施しております。

グラフは0.1C充放電時のデータとなります。高温・真空下での充放電サイクル特性と異なり、容量減衰の勾配はほとんどなくなり、ほぼ劣化無く充放電が可能となります。


140mAhの放電温度特性

25℃で充電した電池の放電特性の温度依存性を示しています。

25℃から120℃まではほぼ定格容量となる140mAhを示します。
一方、25℃を下回ると、固体電解質のイオン伝導度が温度依存性を持つため放電容量が低下しますが、-40℃という極端な低温環境下でも定格容量の約1/3の放電容量を示します。

通常の電解液系リチウムイオン電池では電解液が凍るような極端な低温環境下でも、AS-LiBでは材料が凝固する(凍る)ことがないため、このように放電することが可能です。


140mAhの放電負荷特性

25℃で充電した電池を様々な負荷電流で放電させたときの特性を示しています。

1C(140mA)で放電した際も、0.1C(14mA)で放電したときの放電容量に対して、約80%の容量維持率を示します。



1000mAhの特性


1000mAhの特性

1000mAhの高温・真空下での充放電サイクル特性

100℃、1.0×10-2 Paという高温・真空環境下の繰り返し充放電特性(サイクル特性)です。

充電および放電レートは1Cで行っており、50サイクル毎に充電及び放電ともに0.3Cで容量確認試験を実施しております。
グラフは0.3C充放電時のデータとなります。通常の電池は1回も充電や放電ができない非常に厳しい環境となりますが、AS-LiB1000mAhは500回繰り返し充放電を行っても初回容量の90%以上の容量維持率を示します。

1000mAhの常温・常圧下での充放電サイクル特性

25℃、常圧という通常環境下での繰り返し充放電特性(サイクル特性)です。

充電および放電レートは0.3Cで行っており、50サイクル毎に充電及び放電ともに0.1Cで容量確認試験を実施しております。

グラフは0.1C充放電時のデータとなります。高温・真空下での充放電サイクル特性と異なり、容量減衰の勾配はほとんどなくなり、ほぼ劣化無く充放電が可能となります。


1000mAhの放電温度特性

25℃で充電した電池の放電特性の温度依存性を示しています。

25℃から100℃まではほぼ定格容量となる1000mAhを示します。一方、25℃を下回ると、固体電解質のイオン伝導度が温度依存性を持つため放電容量が低下しますが、-40℃という極端な低温環境下でも定格容量の約1/3の放電容量を示します。

通常の電解液系リチウムイオン電池では電解液が凍るような極端な低温環境下でも、AS-LiBでは材料が凝固する(凍る)ことがないため、このように放電することが可能です。


1000mAhの放電負荷特性

25℃で充電した電池を様々な負荷電流で放電させたときの特性を示しています。

1C(1000mA)で放電した際も、0.1C(100mA)で放電したときの放電容量に対して、約80%の容量維持率を示します。



5000mAhの特性




5000mAhの常温・常圧下での充放電サイクル特性

25℃、常圧という通常環境下での繰り返し充放電特性(サイクル特性)です。

充電および放電レートは0.3Cで行っており、50サイクル毎に充電及び放電ともに0.1Cで容量確認試験を実施しております。グラフは0.1C充放電時のデータとなります。

140mAhや1000mAhと比較して、5000mAhと高容量化した場合でも、ほぼ同様の常温・常圧下での充放電サイクル特性を示します。

5000mAhの放電負荷特性

25℃で充電した電池を様々な負荷電流で放電させたときの特性を示しています。

1C(5000mA)で放電した際も、0.1C(500mA)で放電したときの放電容量に対して、約90%の容量維持率を示します。





全固体電池AS-LiB®独自の製造方法


一般的な硫化物系全固体電池は従来の電解液系リチウムイオン電池の製造方法と同じ塗布式製法を採用しており、有機溶媒を用いた原料のスラリー化、集電体への塗布、電極や固体電解質シートの乾燥、加圧、積層といった工程を経て電池を形成します。

この製法は、既に確立されたものである一方、乾燥によって有機溶媒を除去した後に空隙ができてしまい、粒子間の界面形成を阻害するため、電池性能が低下する要因となります。

このような構造の全固体電池は充放電時に電池を締め付けるための機械的加圧(拘束治具)が必要であり、全固体電池製品化への大きな障壁の一つとなっています。

そこで当社は塗布方式を採用せず、有機溶媒等液体を一切使用しない乾式による全固体電池の製造方法を開発しました。

当社が得意とする、成膜技術、粉体加工技術、加圧成形技術を用いて、原料粉体を溶媒を用いずに成膜し、均一に加圧成形することで、完全に乾式で電極層や固体電解質層を形成することが可能となりました。有機溶媒の乾燥プロセスがないため、電極内に空隙が残存することがありません。
これにより、電池動作時でも拘束治具のような機械的加圧を用いることなく、全固体電池を動作させることに成功しました。








将来のゲームチェンジャーになり得る次世代電池の大本命

全固体リチウムイオン電池は、構成するすべての材料に固体物質を使用した電池です。

当社は、機械加工技術を活用した独自の製造方法によりAS-LiB®(All-Solid-state Lithium-ion Battery)を開発しました。

この製造方法により、従来の全固体リチウムイオン電池の充放電時に必要であった機械的加圧が不要になりました。

AS-LiB® 140mAhセル
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執筆者
カナデビア株式会社 開発本部 電池事業推進室

機械加工技術を活用した独自の製造方法によりAS-LiB®(All-Solid-state Lithium-ion Battery)を開発しました。
独自の乾式製造プロセス・製造装置の構築や、特殊環境で使用可能な電池仕様の確立に特に力を入れています。



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